アール・ブリュットなど

近江路の小旅行では、もちろん長浜の盆梅展は充実していたし、街並みもきれいだったし(街おこしというのか観光資源がしっかり整備されてるところにはちょこっと違和感もあったが)、近江牛のステーキとか守山の某ケーキ屋さんとか、スーパーに美味しいものも鱈腹詰め込んできたけど、びっくりしたのがここでした。
ボーダーレス・アートミュージアムNO-MA
http://www.no-ma.jp/
こんなところがあったなんて知らなかった。訪れたときにたまたまアール・ブリュットの展覧会をやってたわけではなく、いわばその専門館みたいなところなのね。
 
アロイーズの作品はいくらかなじみがあったので普通に楽しめたけど、この財団が発掘したと思しき日本人アーティストのいくつかの作品は、ちょっと強烈でした。
その制作風景のビデオも流れていたが、なんというか、なんというのか、(道徳的にどうとか、彼らにむけるわたしたち「正常人」のまなざしはどうなのとか、そういうこと以前に)これまた強烈で、長いこと見てられなかったなぁ…。
アントナン・アルトーの「残酷」概念に通じるような、「直に来る」感覚。
 
アロイーズの会場で流れていたビデオも、「シゾイド」の病を持つ老女とその創作物の分析といったテーマで制作された作品。いわば文化人類学的にアール・ブリュットを解釈しているわけか。うーん…とちょっと考えるところがなくもない。
故・佐藤真にも『まひるのほし』という作品がありましたね。

キノコちゃんたちとか

2月最終週の休日は、ある日を近江八幡五個荘(五箇荘)、長浜、ついでに守山と近江めぐりの小旅行にあて、別の日をYCAM山口情報芸術センター)訪問と湯田温泉一泊にあてました。
 
YCAMは初めて。珍しいキノコ舞踊団の新作『The Rainy Table』という舞台でした。
http://www.ycam.jp/theater/2008/11/the-rainy-table.html
 
キノコちゃんたちを見るのも初めてだったんですが、聞いてた以上に楽しかったですね。
からだの動きや足先、手先など、西洋のダンス、バレエ、体操なんかのスタイルをベースにしているんだけど、媚びるところのないのびやかに自己主張する女の子たちの身体が組んずほぐれつするようすが、見ていてとっても快感だった。
 
舞台での映像演出を手がけたのがplaplaxというメディア集団。いくつかおもしろい試みもあったけど、こちらはやややりきれなかったところがあるんじゃないかなぁ…。
1ヵ月の山口滞在制作なんだそうで、受け入れるYCAM側のスタッフの充実ぶり、力量もうかがえました。
 
衣装もかわいらしかったけど、“主役”が身に纏う黄色のドレスが、カナリア色ともマリーゴールド色ともいえる鮮やかな濃いめの黄色。それが思い思いに弾けるようすがまるでひよこちゃんみたいだなぁと思ってたら、その晩の夢にひよこが出てきました。ボックスに入ってて、持ち帰る夢だった。
 
こちらの身体はガタガタがちがちゆるゆるですが(^^;、昨日もスポーツクラブでダンスのクラス(こちらはヒップホップ)があり、動作が速くて複雑で「むずかし〜い!」と言いながら、でも「楽しい」のです!

無分別(分別しないゴミではない)

最近の子どもたちは「分別」をまず「ぶんべつ」と読みます。「ゴミの分別」のほうが漢字テストに先に出てくるから。たぶん学校で教わるのもこっちが先なんでしょう。環境教育とかあるからね。「ふんべつ」という読みと意味を教えると、知らなかったって子がほとんど。いやーこういうのってどうなんでしょ?
 
ちがうものを「ちがう」と見分けるところがまっとうな母の愛であり、それがパンドラの箱をあける(最後のセリフにご注目)のが『チェンジリング』だったとすると…
ちがうものを「ちがわない!」と言い張り、ちがわないものを「ちがう」と言うのもまた愛の狂気にて、これは人間と人間の距離を危険なほど縮め、ついには血を見るほどに接触させるわけですね。
 
昨年の日本映画、もちろん『おくりびと』もよかったし『ぐるりのこと』もよかったし『トウキョウソナタ』にも刮目させられたのですが、万田邦敏の『接吻』も忘れてくれるなと言いたい。
その『接吻』とちょうど同じ頃に公開されてて、偶然なのか「距離」を人為的につくる装置に共通点があったのが、キム・ギドクの『ブレス』で、これは張震が出てたというので注目していた向きもあったのかもしれません。
 
ちがうものをハッキリ混同するまさしく無分別不条理が、ほとんどこれはコメディかい?と言いたくなるのが『悲夢』(ひょっとしてこれを韓国語読みするとdreamなんですか?)。これも愛ですかぁ??なぜかオダギリジョーは日本語のままだったり、このどうにも抜け道のない(普通に考えればいくらでも逃げ道はあるはずなのに)「ちがう」「ちがわない」構造の強張りぶりには、やっぱりキム・ギドク、さすがというしかありません。

さらに映画

クリント・イーストウッドの『チェンジリング』も早々に見ました。サスペンスに満ちた展開もさることながら、人の顔とか同定とか、スクリーンに「目を凝らせ!」と緊張を強いられているような、これまた素晴らしい一作だったと思います。
 
昨日七藝のロビーで次の映画を待ってると、おしゃべり声から『おくりびと』の受賞を知りました。やっぱりな〜という感想。所作の美しさとか、亡くなったひとへの敬意をこめた葬儀のありようとか、アメリカ人がいかにも大好きそうな日本らしい美しさが表現されていながら、ストーリーは普遍的。カンヌでパルムドールとった"The Class"なんかと対抗する(棲み分ける?)意味でも、妥当な選択だったのかなと。
主演男優賞はひそかに賭けに勝ちました(^^)。『ベンジャミンバトン』もおもしろかったけど、ブラッド・ピットの演技がどうのという作品ではないし、『ミルク』のほうはこれは作品賞は無理だろうと。で、誰かに何かの賞を取らせるなら、ショーン・ペンの主演男優賞しかないのだろうと。
ハーヴェイ・ミルクドキュメンタリー映画は、ずいぶん昔に見たことがあったけど、ガス・ヴァン・サントによるドラマ映画版、楽しみです。
ケイト・ウィンスレットの主演女優賞も納得の結果なり。受賞作は見ていないけど、『レボリューショナリー・ロード』の演技の確かさに唸らされたばかり。いま確実に「旬」の女優なんだと思います。
乙女の祈り』の頃の邪悪で気が強い美少女Heavenly Creatureぶりが懐かしい。
 

映画は・・・

ジー・メンツェルの『厳重に監視された列車』には心底驚きました。新作の『英国王 給仕人に乾杯!』も見事な出来だったし、旧作でも『スイート・スイート・ビレッジ』とか『つながれたヒバリ』とかは見たことあったんですが、デビュー作でこんな傑作を撮っていたなんて!…サイレントからつながる映画本来の楽しさ、面白さを存分に楽しみながら、『英国王〜』にまっすぐつながっていく風刺性、諧謔味がピリリと効いていて。大阪の最終日に飛び込んだんだけど、もう一度見たいなぁ!!
東欧、ロシアあたりってほんまにすごい映画の宝庫ですね。今日ようやく見ることができたテンギズ・アブラゼの『懺悔』もまた。これは、(グルジアという土地の精がそうさせるのか?)幻想味がたっぷりで、寓話性のゆたかな仕上がり。映像の美しさには舌を巻きました。
あとアレックス・コックスの『サーチャーズ2.0』は映画マニアの会話や映画好きを喜ばせるショットの数々が楽しい楽しい。映画好きによる映画好きのための…ひねりの効いた一作でした。ロジャー・コーマン製作作品では『デスレース』なんてのも見ましたが、B級映画魂にあふれててこれはこれでよかったけど、同じ製作者による"Death Race 2000 "(1975) のリメイク。あ、キャスト見ただけでオリジナルに負けてる。オリジナルも見なければ…。
 

ヒマの予感

いつまでもあけましてでは恥ずかしいこと。ひさびさの更新です。
副業のほうの受験特需が一段落して、いまは比較的ヒマ。3月からはもっと本格的にヒマになります。
主な出講先で非常勤切りと時給カットの嵐が吹き荒れ、クビだけはなんとかつながったものの、コマ数減らされ、しかも安いコマを割り振られ、大幅に収入減になること確実。
本業のほうはもっと惨憺たるありさま。まったく仕事がありません!ああこれでは生きていけなーい…。
 
とかいいつつ、2月最終週がぽかっと1週あくので、例によってどこかへふらっと出かけようかと航空チケットなどいろいろ探していたら、ヨーロッパ便などものすごく安い航空券が出ていておおっ!とあれこれ夢がひろがったものの、早速見積もりとってみると燃油サーチャージが相変わらず(ひところよりはマシになったらしいが)こってり上乗せになって、ひどい場合は航空券額面の倍以上にもなってしまう。韓国香港台湾あたりは比較的オトクに行けるけど、このあたり韓国語中国語もう少し勉強してから行きたいので、今回はパスかな。
てなわけで海外は早々にあきらめたけど、かわりに国内小旅行を計画中。どこにあらわれるかわからないので、行った先の方々、どうぞよろしく(^^)
・・・不景気だというのにこの脳天気、我ながらなんなんでショ(笑)!
 
最近ご近所のこういうとこ↓によくあらわれます。
ブックカフェ ワイルドバンチ
http://bcwildbunch.com/
こないだの日曜も「ふいごまつりvol.2」と銘打って、アイリッシュ音楽の4シューズと、ヨーロッパ各地のふいご楽器をあやつる鞴座(ふいござ)とのジョイントライブ。すごーく楽しかった!
地元映画『テンロクの恋人』第二話の上映も。知った人々、知った場所が次々に登場すると、なんだかお尻がむずむず(笑)。かえって知らない場所があると、「これどこだろ?」とすごーく気になったり。
このお店、これからもジャズや映画の濃ゆ〜いイベント、ライブ、盛りだくさんです。
みなさまもぜひどうぞ!
 
映画もいろいろ見てるけど、日記も書いてないなぁ…。
昨日は『アストレとセラドン』でした。どこかの映画祭でずいぶん前に見たので2度目になるけど、やっぱり印象変わらず。「エロい!」の一言(笑)。
最初のショットでおお!これはストローブ&ユイレかと見紛うけれど、すぐロメールになる(笑)。もう…もう…(あとは言いません)…こういうエロくてエロくて幸せな映画は、ゆっくりと舐めるように味わうのです。とろとろのアイスクリームをゆっくりゆっくり舐めるような感じ。見終わったあともおいしい味と残り香が口のなかに漂って…(という感覚もエロい)。
 
そういえば、こないだなんかの本を読んでたら、この『アストレ』の名前がひょこっと出てきた。もちろん映画とは何の関係もなく、原作の『アストレ』という書物への言及。
映画知るまではこんな文学作品の存在も知らなかったので(わたしが無知なだけ?)、不思議な同時性でした。
この本、訳されてますか?
あ、でも、原文でも読んでみたいな。私の貧弱な語学力ではとても追っつかないけど、映画でもすごく端正な古いフランス語が楽しめました。

おめでとうございます

あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしく!
 
今年の年賀状はラスコーです。アルタミラの牛のほうが好きは好きなんだけど、ネットで探すとなかなか年賀状にしやすい画像が見つからず、ラスコーのほうは、うってつけに「おめでとはん」「や、こっちこそ」とか言い合ってる感じのが見つかったので、これをぱくりました。実はあいだに馬さんが入ってたのですが、消えていただいてます。
この2頭の牛、なんかほかにもいろいろしゃべりそうですな。関西人のおばはんどうしみたい。
セリフつけてみよかと思いましたが、やめときました。
よろしかったら考えてみてください。

今もやってる映画のメーリングリストで、来年の干支映画というのをしゃべってた時期があったのですが、その第一弾あたりが「牛映画」でした。どの映画のどういう場面に牛さんが出てきたよね、闘牛の映画いろいろあるよね、西部劇の名作の数々に牛が出てくるよね、ゴダールにも出てくるよね、といったたぐい。
映画にとって「馬」が非常に重要な動物であることはみんな知ってると思いますけど、牛も結構重要です。
映画の初源ともいえるアルタミラやラスコーの壁画に堂々たる牛が描かれているのも、そのひとつの現れかと…。
 
それにしても、映画ML(リュミエール・シネマクラブというMLです。今も細々とやってますので、興味のある方はよろしく)で「牛映画」について語ったのが、もう12年前になるわけですな…。
当時、いまのわたしの年頃だった人たちが、もう定年、引退、悠々自適といった年頃になっている…。
わたしよりひとまわり下だった若い人たちが、もう人生しっかり固めている年頃になっている…。
年賀状なども見ながら、いったいわたしってなにやってんだろーなー、ふらふらしてて人生のどういう段階なんだか、自分でもわかってないし、ひとからも社会からも全然認知されてないで…とか焦ったり…。
 
新年初見の映画は『ラースとその彼女』『ブロークン』『ブロークンイングリッシュ』(同時期に同一の劇場でやるからややこしくってしゃーないけど、なぜか2本ともメルヴィル・プポー君が出てたり…)『女工哀歌』『ノーマン・マクラレン作品集』。
今日も昼からぽかっとあいてるので『いのちの作法』『ウォー・ダンス』見に行きます。